花粉症はよく知られていても、アレルギー性鼻炎との違いはあまり知られていません。
アレルギー性鼻炎を持っている人が花粉症を併発するということはあるのでしようか。
そして現在は「まだ」花粉症を発症していないけれど、いつか発症するかもしれないと不安に感じている方もいらっしゃるでしょう。
どうしたらアレルギー性鼻炎の人が花粉症にならないですむか、その予防対策を探りましょう。
【もくじ】
花粉症とアレルギー性鼻炎の違いとは?
「花粉症」というのは、実は「アレルギー性鼻炎」の一種なのです。
「アレルギー性鼻炎」にかかると「くしゃみ・鼻づまり・サラッとした鼻汁」の3つの不快な症状が鼻にでます。
花粉が飛散する季節に症状が現れる「季節性のアレルギー性鼻炎」を花粉症と呼んでいるのです。
■アレルギーとは?
空気中には、鼻炎を起こす原因となる物質(抗原)が浮遊しています。
その空気中の抗原=アレルゲン(=アレルギー原因物質)に、私たちの体の免疫システムが必要以上に過敏に反応している状態がアレルギーなのです。
アレルギー原因物質が刺激となり、私たちの鼻が敏感に反応してしまい、鼻炎となってしまうのです。
特定の植物の花粉を「抗原」とする鼻炎を「花粉症」と呼びます。
人によりその原因物質(抗原)はいろいろ異なります。
花粉症の代表的なアレルゲンは「スギ花粉」です。
他にもヒノキやブタクサ、ヨモギ、カモガヤなど約50~60種類もの植物が花粉症の原因物質となるそうです。
一説では、日本人の約2~3割が花粉症だとされ今後も増加し続けるとか。
これも花粉症の一例ですが、就寝中の閉め切った部屋に置かれた花瓶の野菊が原因で呼吸が苦しくなるというような症状もあるそうです。
重篤な呼吸困難という程ではないのですが、気が付いて花を別室に置いたところ症状は全く治まったそうです。
思いがけない植物での花粉症は他にもあるそうですから、油断はできませんね。
■花粉の時期には転地すればよい?
沖縄や北海道で過ごせば快適だとか言われていますが、ホントのこと?
実はこれも「人により」なのですよ。
そして「地域色」も。
神戸六甲山麓の開発で大量に植樹された「オオバヤシャブシ」による花粉症というものも報告されています。
「スギ花粉」は少ない北海道ですが「シラカバ」による花粉症があるのです。
詳細はこちらから(http://www.iph.pref.hokkaido.jp/charivari/2004_04/2004_04.htm)
アレルギー性鼻炎は「通年性」と「季節性」とに分けられ対策にも違いがあります。
・「季節性アレルギー性鼻炎」=花粉症(前述)
大雨が降って空気中の花粉が減少した後とか、花粉が飛び交う季節が過ぎ去れば花粉症の症状は自然に治まります。
・「通年性アレルギー性鼻炎」
アレルゲンは季節に関わらず存在するものなので、年間を通して症状がみられます。
主なアレルゲンは、
- ハウスダスト(寝具・敷物・衣類などから出てきたチリやホコリや繊維)
- ダニ
- ペットの毛
- カビなど
そのためアレルギー性鼻炎の症状は、室内を徹底的に掃除したり、原因となるアレルゲンが無い環境に移動したりなどすれば、大きく改善します。
寝具の管理とか洗濯物の部屋干しなどは、すでに常識的となっていますね。
アレルギー性鼻炎で花粉症を併発!?
「アレルギー性鼻炎」のようなアレルギー疾患をもっている人や、家族が何らかのアレルギー疾患をもっている、このような人はアレルギー疾患と無縁の人と比べて花粉症になりやすいと考えられています。
いわゆるアレルギー体質の人は、花粉症にもなりやすいのです。
■アレルギー性鼻炎で花粉症を併発?
アレルギー発症の過程は、
1.体にとり異物である抗原(アレルゲン)を鼻の粘膜から吸入することで体内に「抗体」ができます。
2.繰り返し何度もアレルゲンを吸い込んでいるうちに「抗体」が増えていきます。
3.やがてアレルギー症状を発症。
例えて言うと容器の縁ぎりぎりまで増えてきていた水が、ある日とうとう溢れ出す、これが発症ということなのです。
例えばダニが抗原のアレルギー性鼻炎の人が、今は発症していなくても、その人にとって「特定の花粉」もまたアレルゲンの場合には、いずれ発症の時が来るといえるのです。
その状況が「アレルギー性鼻炎で花粉症を併発」なのです。
■複数の花粉で花粉症の併発も!
花粉症の約8割を占めるのがスギ花粉症ですが、スギ花粉症の人はスギより少し遅れて花粉を飛ばす「ヒノキ花粉症」を併発する場合が多くあります。
スギ花粉とヒノキ花粉のアレルゲンは似ているため、スギ花粉の飛散時期が過ぎても、症状が続いている場合は、ヒノキ花粉症を疑うと良いそうですよ。
アレルギー性鼻炎の人が花粉症にならないための対策はコレ!
最近では複数の花粉の花粉症の人や、ダニやハウスダストが原因の通年性アレルギー性鼻炎と花粉症を併発している人も増加しているそうです。
これでは年間を通して症状に悩まされてしまいます。
通年性アレルギー性鼻炎をお持ちの方は花粉の時期はマスクや眼鏡などを着用し、できれば不要な外出は避ける位の予防策が大切です。
また自分がどの様なアレルゲンに反応するのか、積極的にアレルギー検査をしておくこともよいでしょう。
大量の花粉に出会うと、体が花粉に対する抗体を産む可能性がたかまります。
スギに対する抗体がたくさんできると、スギ花粉症を発症しやすくなるのです。
また、これまで軽症で花粉症であることに気がつかなかった方も、花粉を鼻からたくさん吸い込んだり、目に入ったりすると、花粉症の症状が強くなります。
花粉にはできるだけ接しないこと、これが防御策なのです。
今後花粉症にならないためにはどうすればよいかの予防法をまとめました。
- マスク
花粉防御に適したマスクも販売されていますが、完全に防げるものでしょうか。
マスクは吸い込む花粉量を、約3分の1~6分の1に減らし、症状を抑える効果が期待できます。
今は花粉症ではなくても花粉を吸い込む量を少なくすることで、新たに花粉症になる可能性を低くすることが期待されています。
- うがい
うがいは、のどに流れた花粉を除去するのに効果があります。
外出から帰ってきたら風邪の予防にもなりますので、うがいをしましょう。
- 洗顔
人間の体に花粉が付着しやすい場所は頭と顔です。
外出から帰ってきたら顔を洗い花粉を落としましょう。
外出中の洗顔はむずかしいので、手洗いに行った際に眉毛とまつ毛を指に水をつけて拭うようにしておくだけでも、効果がありますよ。
- 洋服の服地
表面がすべすべしたポリエステルなどの化学繊維のものには花粉が付着しにくく、付着した花粉を吸い込む量を減らすことが期待されます。
すべすべした生地のコートを着用し、玄関先で脱ぐようにしている方もいるそうです。
- めがね
花粉の飛散の多いときには、メガネで目に入る花粉を2分の1~3分の1まで減らすことができますが、眼の症状を軽減できるかは不明。
- その他
花粉が人間に付着しやすいのは表面に出ている頭と顔です。
頭の花粉は帽子などで避けることが可能です。
自宅へ入る前に帽子は脱いでくださいね。
あとがき
花粉症患者が急激に増えた原因として、これまで戦後の国の造林計画でスギ花粉が増加したことと、車の排気ガスや工業化による大気汚染の影響で鼻の粘膜が弱ったからと言われていました。
最近では腸の免疫システムの崩れも花粉症に深く関係していることがわかってきました。
小腸は体全体の約60%の免疫細胞や抗体を持っているそうで、小腸の免疫細胞の数や質のバランスが崩れると、アレルギーの病気になりやすいことがわかってきたそうです。
関連するこどものアレルギーに関する新しい知見をご紹介しましょう。(検証はされていませんので、あくまでご参考まで。)
日本ではこどもにピロリ菌の除去をすすめることは一般的ではないものの、参考にしたい情報も含まれているようです。
この本をご紹介したい理由として、20代でピロリ菌の除去をした後に突然、花粉症とほこりが抗原のアレルギー性鼻炎にかかってしまった男性の例があるからなのです。
◇「失われてゆく、我々の内なる細菌」(マーティン・J・ブレイザー著:みすず書房発行)
「ピロリ菌」は大人にとっては除去すべきものですね。
この本ではピロリ菌は子どもの喘息、花粉症、「アレルギー性鼻炎」、アトピー性皮膚炎などの疾患を予防し、抑制する効果があると紹介されています。
ピロリ菌は大人同様、子どもも「抗生物質」により除菌、あるいは活動を弱めることができます。
けれど1歳未満のこどもへの抗生物質の投与が「7歳時点」での「喘息や花粉症の発症」と有意な関連があるというのです。
またピロリ菌がいない子どものほうが喘息やアレルギー疾患になりやすいことが研究から明らかになっているという主張なのです。
医学の進歩と共に知見も更新されます。
普段から関心を持って、私たち自身の知見も更新したいものですね。